「出版すれば経営がうまくいく。」
こういうと「電子書籍ではダメですか?」と質問される方がいます。
結論から言うと、電子書籍と紙の書籍では「役割」が違います。
役割を知った上で、両者を使い分ければ、驚くほど効果を発揮します。
電子書籍のメリットとは?
- 手軽さ
- 即時性
- 検索しやすさ
- 修正機能
- 印税が多くもらえる
などです。
まず、1つ目のメリットは「手軽さ」です。
電子書籍は手軽に持ち運びが可能です。
それと比べて紙の書籍は重くて、持ち運びにくいデメリットがあります。
例えば、電子書籍ならタブレット1つで100冊の本でも持ち運ぶことができます。が、紙の本100冊持ち歩くためにはスーツケースや台車が必要かもしれません。
2つ目は「即時性」です。
電子書籍は制作スパンが短く済みます。
例えば、思いついたらワードで書いて、データを入稿すればすぐに出版できます。
それと比べて紙の書籍は、編集や赤入れ、校正、デザイン、流通販売などを必要としますから、どうしても時間がかかります。
3つ目は「検索機能」です。
電子書籍はデータなので検索がしやすいです。
知りたいキーワードを入力すれば、そのページに飛ぶことが瞬時にできます。
例えば、「えっと、トヨタ自動車のことがどっかに書いてあったなあ。どこだっけな?検索してみよう。」とすぐに目的のキーワードを探すことができます。
紙の書籍の場合は、目次などをキッカケに自分で検索せねばなりません。
索引などがついていれば調べやすいですが、それでも電子書籍よりは検索性に劣ります。
4つ目は「修正機能」です。
電子書籍の場合、出版後に修正が可能です(kindle原稿の更新についてはこちら)。
例えば、誤字脱字が見つかった場合など、データですから修正して再配信することができます。
が、紙の書籍の場合は、一度、流通させてしまったら後から修正ができません。回収も現実的に不可能です。
5つ目のメリットは「印税が多くもらえる」点です。
電子書籍は間に介在する取引業者が少ないため、その分、取り分が多くなります。
が、紙の書籍の場合は、出版社や取次、書店など取引業者が多くなる分、著者の取り分は少なくなります。
以上だけを見ると、「なんだ電子書籍の方がメリットだらけじゃん」と思うかもしれません。
が、紙の書籍には電子書籍にはないメリットがあります。
デメリットが逆にメリットにもなると考えられます。
例えば、出版後に「修正しにくい」ということは、制作の段階で否が応でも「慎重」になります。
内容をとことん精査するというインセンティブが働きます。
ということは、とんでもない内容や価値のない内容、無責任な内容は発信しにくくなります。
編集も基本は入りますし、法的な訴訟に耐えられるように校正なども入れたりします(出版社や出版形態にもよりますが)。
結果として、完成度が高く、責任感の高い内容に仕上がりやすいメリットがあります。
これが暗に「重み」として読者に伝わるわけです。
わかりやすくいえば、責任感や覚悟のようなものを紙の書籍からは感じるということです。
この「重み」こそが「ブランディング効果」につながります。
それと、電子書籍出版は基本的に「自己都合」で発信できます。
対して紙の書籍出版は「出版社」や「編集者」などの第三者のフィルターが基本的に入ります。完全な自己都合では出版できません。どうしてもそこに社会性や公共性などが必要になってきます。
何でもかんでも出版できるわけではないのです。
紙の書籍の場合は、世に出るまでに複数の人が間に入り、内容を精査します。
先ほども言いましたが、とんでもない本を世に出した場合に取り返しのつかないことになるからです。下手すると訴訟されるリスクもあります。
だから、厳しく内容を精査し、流通させるわけです。
このフィルタリングが「信頼の担保」につながりやすいメリットがあります。
「電子書籍書いてます」といっても、「へー」で終わるかもしれません。
が、「紙の書籍書いてます」というと、「すごいね」と尊敬されやすい傾向にあるのは、このような「信頼の担保」が暗に含まれているからといえます。
また、紙の書籍は「即時性」に劣るデメリットがあります。
制作に時間がかかるからです。
ということは、必然的に「長期間の保存」に耐えられるものを想定して作られやすいメリットがあります。
苦労して執筆し、世に出した本が、一瞬でなくなることは著者としても出版社としても避けたいわけです。
だから、書籍のテーマや内容は長い期間に耐えられるものになりやすい傾向にあります。
結果として、書籍購入後、本棚に長期保存してもらいやすくなるわけです。
例えば、ブログ記事やニュース記事を丁寧に印刷し、保存しておく人は少ないでしょう。
特に情報化社会の昨今なら尚更です。
ところが、紙の書籍ならどうでしょうか?
多くの人がよほどのことがない限り、本棚などに長期保存するのではないでしょうか?
ゴミ箱に紙の本を「ポイ」と簡単に捨てられる人は、そう多くはないはずです。
紙の書籍は「長期保存しておきたいテーマである」という認識が、人間の無意識にはあるからです。
また、暗に「著者や出版社、印刷会社が苦労して制作した貴重な物」という理解がありますから、そう簡単には破棄されません。
これが、私たち経営側としては大変なメリットに働くわけです。
いわば、「あなたの会社のセールスマンが書棚に常駐している」状態が長期にわたって続くわけです。
このように、紙の書籍と電子書籍は双方にメリット、デメリットがあります。
重要なことは、用途によって使い分けることです。
例えば、「即時性」に適した内容であれば、電子書籍の方が良いでしょう。最近ならコロナ関連のネタでしょうか。そういったものは「即」出すことに意味があるからです。
逆に「長期効果」を狙うのであれば、紙の書籍に軍配が上がります。
「ブランディング効果」や「第一人者効果」を狙うのであれば、信頼の担保価値が高い紙の書籍の方が優位でしょう。
どちらが良い悪いとかではなく、目的によって使い分けられるのが優秀な経営者です。